こうして、2010年5月に、天満天神の水の物語は始まり、楠見先生は早速、天満天神地域周辺の過去のボーリング調査のデータに当たってくれました。
一方、語り手は、商店街に楠見先生の話(1インチパイプなら井戸を新たに掘ることができる)をお伝えし、天満天神の水を復活できる可能性があることをお話ししました。当時の天神橋筋商店連合会の会長にも直接お話ししたところ、夢のある話として、大変に乗り気になってくださいました。
「ああ、なるほど、こうして大阪天満宮の五知の井が復活したのね」と早合点してはいけません。当初のお話は、大阪天満宮の五知の井の復活というわけではなかったのです。では、どこかって?
この話を知っている方は少ないのですが、実は、天神橋筋3丁目商店街の中に掘ろうという話だったんです(ここは、驚くところ…(笑))。
そんな場所があるかといえば、あるんです。
ところで、今回の写真は、天神橋筋3丁目商店街で、奈良県葛城市の物産展が開かれたときの写真です(東日本大震災が起こり、途中から被災地支援の募金活動に変更になりました)。場所は、「天三 おかげ館」。天神橋筋3丁目商店街振興組合が所有する、イベント、会合などに使える多目的スペースです。
実はこの多目的スペースの裏側(写真の右側通路から奥に入ります)に中庭があるんです。そして、ここが最初の候補地でした。
四 専門家の降臨
前回は、「楠見晴重先生から、天満の地下水を復活させる可能性が示唆された」お話をしました。
楠見先生は地下水のエキスパートで、京都の地下に豊富な水が溜まっている様子(京都水盆というそうです)を3次元的にCGであらわすことに成功しています。さらには、この京都水盆の水量は約211 億トンであり、なんと琵琶湖に匹敵する(!)量であることも明らかにしました。こうした楠見先生の研究成果をうけて、関西大学と伏見酒造組合は、地下水の利用と観光保全についての研究で連携協定を結んでいます。
楠見先生と天満の地下水の話をする数か月前、語り手は楠見先生の講演会でこの話を聞いていました。しかし、天満の地下水の復活に、楠見先生のお知恵を拝借しようという発想はまったくなかったのです。まったくいつでもどこでも迂闊です。
そして、町街塾(こちらは、「『天満天神の水の物語の始まり』の始まり」をご参照ください)で楠見先生とご一緒し、大学に戻る学長車に乗せていただかなければ、この発想はずっとないままだったのです。
こうした偶然から「天満天神の水の物語」は始まりました。いつも「偶然」から始まるその物語が紡がれていくには「前をみては、後えを見ては、物欲しと、あこがるる」人々の集まりが要るようです。
そうして、天満天神の水の復活は、多くの人々の思いとなっていきます。